話せるようになってわかった。あと30年は日本人は英語を話せないと思う理由(1)
日本人が英語を話す日なんて来ない。こういうと言い訳みたいだし、ひがんでいるみたいだが、僕は英語には不自由しない。
残念ながら研究結果がそれを示してしまっている、というお話だ。
ネガティブなことではない。この事実を知ればもっと有効な戦略が立てられる。
みんな大好き「難しい言語ランキング」
世の「大半の人は、自分の母語が世界一難しいと思っている」そうだ。
ソースも定かでないこんな話を持ち出したのは、「もう笑っちゃうほど当たっている」から。
僕がオーストラリアで学生をしていたころ、同居人にクリステルというフランス語の先生(フランス人)がいた。
フランスの大学院ではゼミの主席で、講師としても人気抜群の先生だった。
彼女いわく、
「大声では言えないけどね、私がもし外国人だったら、フランス語は絶対選ばないわ。難しすぎるもの」
以下、何がどう難しいのかの説明が続く。
そこへ、同じくフランス人のファブが口をはさむ。
「フランス語はクレイジーだよ。特に書くほうはね。いまだにオレも自信がないほどだよ」。
そう言われてしまっては、フランス語がわからない自分としてはふんふん、と同意するほかにない。
一方、僕がフィリピンの語学学校で英語を習っていたころ、親友はジョンスという韓国人だった。
たぶん本人は覚えていないと思うが、彼が言うには
「韓国語は難しい。外国人が極めるのはほぼ不可能に近いよ」。
…あれ?日本人にとっては世界一学びやすい外国語と聞いたことがあるけれど…まあいいか。
ググると、どうやらポーランドだとかフィンランドだとか、世界中の人が自分の母語を世界一難しいと考えているらしい。
日本も同じだ。検索してみたらいい、日本語は世界一難しいと思っている人の多さに驚かされる。
なぜだろう。僕が考える理由はこうだ。
「母語については精通しているから果てしない奥深さを理解しているが、外国語はそこまで知らないから、まだそれに気づいていない。」
日本語が一番難しいわけないでしょ。ちなみに僕はそんな話題が出たときには、日本語って「話すほうだけなら」メチャクチャ簡単だよ、と答えていた。絶望的な発音の少なさとユルユルの文法。世界一易しいと言われるマレー/インドネシア語やスワヒリには負けるとしても、易しいほうだと思う。
英語が難しいというのは、言い訳ではなくて科学的真実
英語は、あるところまでやってはじめてヤバさに気が付いて戦慄した。
単なる僕の思い込みではなく、それは研究結果にも裏打ちされた事実だった。
まずは英語話者にとって難しい外国語ランキング。主に漢字が理由で中国語や日本語は「最難関」ということになっている。
出典:
Knowlton, E. (2014, May 27). The Easiest And Most Difficult Languages For English Speakers To Learn. Retrieved June 27, 2016, http://www.businessinsider.com/the-hardest-languages-to-learn-2014-5
いっぽう日本語話者にとっての、難しい外国語ランキング。
出典:
ディラ国際語学アカデミー「言語別の推奨学習時間数」(最終閲覧日2016年6月28日)
ここでは英語は上から二番目の難易度だ。
本当は、さらに説得力のある、辞書編纂会社が作ったリストをみたことがある、そこでは英語は「最難関のカテゴリⅣ」に入っていた。このリストがネット上で再発見できなかったので、発見し次第、掲載したい。
※あくまでゼロから学ぶケースであり、ある言語をマスターしていたら語源の近い言語は学びやすいので必ずしもこの通りにはならない。
たとえばこの表で、僕が大学時代にやっていたスペイン語は、英語よりも簡単とされている。
スペイン語は、発音がカタカナ発音でも通じるほど簡単だ。反面、たったひとつの動詞に30個も40個も活用変化があって悩まされた。さらに、フランス語などと同様、机でもイスでも「モノ」にはすべて性別があり、男か女かで冠詞も使い分けなければならなかった。
そ・れ・な・の・に、だ。
活用が数個しかない英語のほうが難しい、とされている。
そして僕は、この評価を全面的に支持する。
ーはい、そうです。
「活用が数個しかない英語」のほうが、「活用が30も40もあってモノに性別があるスペイン語」よりも難しいと言われて、僕は信じます。
英語って特別にヤバい、それを実感させられた理由は大きく分けてふたつ。
1発音と、2語彙が、不可能レベルにすごい。
1.思った以上に発音がヤバい!
これは、よく言われるRとLだの、BとV、IとY、th音、といった意味ではない。そんなものは習えばいいだけ。
(それを言うなら、子音だけの音を出すこと、アに聞こえる母音を多数使いわけること、外人みたいに腹やノドの奥からの声で話すこと、などのほうがよほど慣れない)
じゃあなにかというと、これだ。
1-1 アクセント。強勢は一体どこ?
中国語だと「声調」があって、カタカナで書くと同じ音でも声の上げ下げによって意味が変わることは聞いたことがあるだろう。ベトナム語やタイ語もそうらしい。
だが英語も、声調はないけれど、「強勢」で意味が変わったり、意味が不明になったりする言語だ。
※注:英語では「お国訛り」のこともアクセントと呼ぶのでまぎらわしいが、ここでは音の強弱のことをさす。
日本語に例えて言えばこうなる。
食卓で、隣の人が言いました。「端とってください」
……「箸とって」、だろ! まあわかるけどよ。
この感覚、英語においては日本語以上に気を使う必要があるようだ。※なお日本語は”高低”で差をつけるが、英語は”強弱”だとされる。
英語ではマイナー単語まであらゆる名詞動詞形容詞副詞について、この「イントネーションが変だと意味まで変、もしくは伝わらない」の問題がついてまわる。
大ヒットしたコメディ映画「ハングオーバー」で、こんなシーンがある。
アラン「He is retard. (retɑ́:rd)」
→聞いていた一同、意味がわからずポカンとする。
すかさず隣のダグが正しいアクセントで言いなおす。
「retard. (ríːtɑːrd)」
→ 一同、ああそういうことねとうなずく。
スペルは同じ。音もカタカナでは同じ。アクセントの場所はスペルからはわからない。
この例では、前者のアクセントだと「妨げている」意味の動詞、後者が「知恵遅れ」の意味の名詞だ。
もっと身近なところにも罠はある。たとえば、おなじみの、値引きの discount…って言うときにどの部分を強く発声しているか?
…じつはこの単語は、前半”ディ”のほうを強く読むのが正解だ(名詞ではなく動詞で使うときも同じ)。逆だと思っている人が多いけど。
「自分はわかっていたよ」という方も、まだ油断はできない。この単語は、音節の数からすれば”例外単語”だから、これが当たり前だと思っている人は、別の単語において強勢を間違っている可能性だってある。
アクセントだけならまだいい。
歯ぎしりをして学生時代の先生を恨むのが、次の事実だ。
続く↓