話せるようになってわかった。あと30年は日本人は英語を話せないと思う理由(2)
前回みたとおり、日本人にとって英語は特別に難しい言語、というのは言い訳ではなく、研究結果があったらしい。
引き続き、何がどう問題なのかを検証する。
前回の記事はこちら。
1-2 母音。笑っちゃうくらい日本語と違う、母音。
アクセントのほかにも、学校教育では意識してこなかったちょっとした母音の違いが、実戦では見事に痛恨のダメージを与えてくる。
あなたが当時の教師を恨むことは確実だ。
すこし例を挙げてみる。
例:
・mall ショッピングモール - mole ほくろ 違いは?
・hurt 痛める - heart ハート 違いは?
・burn 燃やす - barn 納屋・物置
・boat 船 - bought 買う(過) 違いは?
・whole - hole - hall ー haul それぞれ発音は?
まあスペルがUならこう、とか少しだけ法則性はあるのだけれど、学校の勉強でどれだけの人が意識しただろう。
これは氷山の一角のうちのさらに氷山の一角にすぎない。
僕はこれまで、母音にかぎらず、出会った「発音に要注意」の単語は EvernoteⓇにメモしていったが、なんと600単語以上になってしまった。(しょうもないことに気づくことある、実はヒロインとヘロインが同じだったリとか)
このように、中学で習ったはずの単語までひととおり、出てくるたびに発音をチェックするはめになった。もちろん先生を少し恨んだ。
1-3 スペルから読み取れない。どうしようもない
さて、発音がヤバいよというのを見てきたわけだが、それに規則性が無いこと(本当は音節がいくつならこう、というのがあるんだけれど例外だらけ)、さらには、スペルと合っていないことが事態を深刻にしている。
英語もかつては発音が変わるのに合わせてスペルを変え、スペル=発音を表していたそうだ。
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だが活版印刷が発明され、スペルが固定化されたタイミングで、発音の変化、とくに母音の変化が流行してしまった。
結果、文字と発音が合っていないという取り返しのつかないカオスになっているわけだ。
スペルから発音がわからないだけではない。
スペル通り読める単語たちも、アクセントはわからない。規則がないから知らないとどうしようもない。
またラテン語やフランス語などからの借用語も話をややこしくする。
ここでも例を少しだけ。
・worth- worthy、breath-breathe, 読みは?
・hypothesys, opportunity, consequence, circumstance, subsequent, category, advantage... こういったビジネスや論文で当たり前のようにつかう言葉たち、どこにアクセント(強勢)がある?
・ウサギとカメ = Hare and Tortoise なんて読む?
・advertisement, schedule, privacy イギリスやオーストラリアでの読みは?
・仏語からの輸入の genre ジャンル や gourmet グルメ、英語で何て読む?
結局、触れて覚える以外に方法がない。
聞こえたまんまの「音」から英語を覚えるネイティブにとってはそれほど問題にならない。
2.語彙がヤバい
語彙数が世界一多いのは英語だ。ギネスブックにも記録されているそうだ。
シェークスピアの時代と今とでは、語彙数が5倍に増えているという。
ネット記事や小説を習慣的に読み始めると、慣用句、イディオムの多さにも驚く。
日本語も語彙は多いというが、ただそうした主張をする人の言い分を見ると、僕らからは縁遠い古語や死語が多い。
英語だって大辞典だと死語だらけだが、書き言葉では生きている語だけでものすごい数がある。
例を挙げたほうが早い。
英語は、少し動作が変わると、いちいち動詞をまるきり変えて表現する。
例:日本語「車で・行く」、「歩いて・行く」「飛行機で・行く」
→英語だと動詞を分ける。 drive, walk, fly という具合だ。
で、たとえば「見る」という動作を表す単語。
watch, look, see, gaze, stare, peer, glance, glare, glimpse, peep, peek, squint, leer, ogle, gape..
つづいて「歩く/走る」を表す単語。
walk, run, scoot, trot, wander, saunter, plowl, loiter, stroll, ramble, tripese, limp, hobble, shuffle, gimp, shamble, trudge, plod, peddle, wade, swagger, tiptoe, toddle, totter, stagger, roam, rove, putter...
死語や古語じゃない。英語で小説を読んでいたらひとつ残らず全部出くわす単語だ。
日本語でも 見る・眺める・凝視するなどたくさんあるけれど(見つめる・見とれる、とかは派生だから反則。それなら英語にもwalk down, walk overとか挙げたらきりがない)それと比べても多すぎる!
なんでこんなに多いのだろう。
英語の文章を書くときにはパラフレーズを連発して同じ単語の使いまわしを避けるということが知られている。
非合理的?
だがネイティブでもない僕でさえ、英語の文章を書くと、自分でもなぜか直観的に、同じ単語を使いまわすとダサい、と感じるようになってくる。同義語辞典は欠かせない。
だから同じ意味の別の単語は「必要」なのだ。
それはたぶん英語が文法ガチガチで、省略させてくれないからだと思った。日本語と比べて省略の余韻ってあんまり無い。
自明の主語でも、書くしかないから、代名詞とか比喩にしないと何度でも繰り返されてしまう。自明の目的語でも、同様だ。
動詞だって、無いと文にならない。だからバリエーションを増やすことによって、ただ繰り返しを避けるだけでなく、微小な意味の差を表現している。
実際に英語で日記書いてみたらこの感覚がわかる。
単語や文体にバリエーションをつけていかないと、きわめて退屈な、同じような文の羅列になる。
機知に富んだ豊富なボキャブラリーこそが、書き手の腕の見せ所になる。
以上、英語の難しさについて書いた。
では、どうすればいいのか。
もうひとつ面白いデータが落ちていた。