発音フェチの日本人留学生たち(3)ガチで対策してみた
なにが「英語ネイティブスピーカー”っぽさ”」を生み出すのかがはっきりした。
いやな言い方だが、この「~っぽさ」を身に着ける方法を紹介する。すると逆に、過大評価される側になることができる。
前回は実例を見ながら、なにをもって僕らが本物っぽい発音と感じているかを明らかにした。
どうやってあの声を出そうか。
どうにかしてあの深い声をだすのが最優先だ。
もしもほかの要素がダメなままでも、この声だけでそれなりに恰好がつくのだ。
さらに、あのリズムと抑揚がほしいし、カタカナっぽさが無くせたらさらにいい。
じつは僕はわけあって、大阪にいたころに、大病院のめずらしい言語矯正専門の先生のもとに何度も通ったことがある。
このときは障害の矯正のためだったので、英語でもなければ太い声とも無関係だが、僕はそんなこんなで発声について研究したことがあるのだ。
ではやり方。
<1> 太い声を、ノドの奥のほうから出す
1.まず腹式呼吸で息を吸う - 鼻から息を吸ったときに、おなかがふらんでいく側の呼吸。(横隔膜が下がり肺がふくらんだぶん、おなかがでっぱる)
2.低めの声で、おなかからの声を出す。カラオケの発声とかでおなじみなので、細かくは書かない。→太さとボリュームが増す
3.だがそのとき、ノドの奥のほうから声がでる。口の先っぽのほうからの声の日本語とここが異なる。
ええい、めんどうなので 2と3 だけでもいい。
<2>僕らから見れば大げさなほど、抑揚をつける
もう一つは、英語を話す外国人になりきって、モノマネをして、抑揚をつける。
慣れない外国語で舌が追いつかないなら、言葉は無しでもいい。リズムと強弱だけ、コピーしてみる。
「あぃうぅーうううーう、あうあうーうー」
だっていい。
適当に言っているわけではない。たとえばレイチェルズイングリッシュ®とかの学習サイトでもリズムをつかめと推奨されている。
ノドの奥から ”ゴニョゴニョ~”だ。
※強弱で波打つという意味だ。不明瞭だとか小声の意味ではない。
ウソ臭いかもしれないが、言ったのは僕でなくネイティブ講師だ。
外人が英語をしゃべるときゴニョゴニョ言っているように聞こえる理由は、本当にゴニョゴニョ言っているから。
出典:リチャード川口 バンクーバー 発音の鬼が日本人のためにまとめた ネイティブ発音のコツ 〈話せる編〉 (アスカカルチャー)
子供のころは、英語の授業でガイジンふうに英単語を発音したら超絶恥ずかしかった。いま大人になったら、そんなふうに話さないほうが、はずかしめられる側になった。ルールが逆転したのだ。
最後がこちら。
<3>子音だけの音では、母音を徹底的に消す。
子音だけの音に、母音までつけてしまうと、日本語のカタカナになる。
advertisement [`ædvɚtάɪzmənt] なら d が ド[do] になり、t が ト[to] になってしまう。
appropriate [əprˈəʊprièɪt] なら p が プ[pu] になり、tが ト[to] になってしまう。
そんなこと英語学習者ならだれでも知っている?
いや、非・帰国子女日本人で、これができている人なんて見たことがない。「~ぽさ」追及にあたっていちばん難しいのがこれだ。不可能レベルに難しい。
完璧な英語が話せる日本人、かつ深い声で話す日本人でも、非・帰国子女ならば、日本流アクセントがある。
そのことはYoutubeで「○○の英語力がすごい!」とかのタイトルをクリックしたらすぐにわかる。普段はそんなものクリックしないが。
ここで疑問 ー ぼくらは、彼らの「どこ」にその”日本流アクセント”を感じているのだろう?
それがこの「子音だけのはずの音に母音の音が残っている」だ。
どれだけ流暢に意思疎通できる人でも、ふとしたタイミングで、それがあらわれる。たとえばだが、
かれらには時々、~ing の g 音 が [ŋ] ではなく グ[gu] になる瞬間があるでしょう? cut みたいな最後の t 音が、ネイティブと比べたら [to]っぽくなるでしょう?
だから、自分でこれくらいかな?と思っている以上に、「やりすぎだろこれは!ほぼ無音になっちゃうだろ!」 というくらいに、思い切り母音を取り除く。末尾の子音、Lとかなんて「口のカタチだけつくるけどほぼ声は出さない」だ。
ではやってみる。
・声を低く太くして、ノドの奥のほうでゴニョゴニョ、
・大げさに抑揚をつけて、
・これじゃ無音じゃないか?というくらい余計な母音は殺して。
以上の3点セットで、録音死してみたら、今までより「~っぽい発音」に近づく。
何か英語の文と、まねる相手がいないといけないので、以下の映像でどうぞ。再び Rachel's English® から。(学習用のわりには早口。会話が始まるのは1:15くらいから)
※第二言語で考える僕らは、もっとゆっくり話すだろう。
ゆっくり話す英語講師の動画があれば差し替えたい。
リピートして練習しても、録音した自分の声を聞いたらガッカリするだろう。多くの場合は子音だけのはずの音に母音が残っている。
僕は過去、ビジネススクールで自分のスピーチビデオを提出する課題があり、同居人のクリステルとファブが仕事に出かけた隙に撮影にとりかかった。何度撮っても カコワルイ( ゚Д゚) と感じ、150回ほど録画と再生を繰り返して撮り直した。もちろん皆の前で発表するときも録音した。
録画を見て気づいたのは、やるなら極端がいい。少しじゃなく、思いっきり極端にやって、ようやく少しマシになる程度だ。
健闘を祈る。
以上、あえて「発音フェチ」になったつもりで書いた。
日本にないth音だとか、単語の”リンキング”などは、すでに学習していることを想定している。
ここでは、一貫して「ほかの日本人学習者にハッタリが効く」ということに主眼を置いた。
本来一番大事な「伝わる発音」は、また別問題なので注意したい。
まず、「Sorry??」と聞き返される場合の多くは、単に声が小さい場合が多い。
だから、ネイティブっぽい発音を心がけても、声が小さいと、”カタカナ風だけど声の大きい人”のほうが伝わる、というカッコ悪い事態にになる。
思ったよりも口を大きめに開けて、こんどこそ学校の先生の言うほうの「正しい発音」をしなければならない。各単語のどこに強勢があるかを知る必要もある。
それらはもう学習済みであることを前提とした。すでに知っていて、一生懸命やっているはずなのに、発音でリスペクトされないなあ、という人のための記事だった。
英語は、口の前に布をあててテストすると、息の吹き出す強さが日本語よりも強いことが知られている。
LとかTHとかVが日本語と異なる点は「口や舌の先のほう」にある。
それなのに! 声だけは逆に「奥のほう」から響かなければならないなんて…
どうりでこれまで帰国子女以外には誰もできなかったわけだ。